研修紀行(日本医科大学付属病院 2010.3.8~12)

徳島大学病院 循環器内科 医員 楠瀬賢也

◆はじめに
 2010年3月8日~12日の期間、大学病院連携型高度医療人養成推進事業の一環で日本医科大学の循環器内科(一内科)に研修・見学をしたので御報告します。入院・外来の問題はありましたが、諸先生方の御配慮で行くことが出来ました。

◆初日
 日本医科大学に到着したのは午前10時過ぎ。徳島発の朝一の飛行機に乗り込んだはずですが、結構遠くてこの時間になってしまいました。
 集中治療部の医局はわかり難いとメールで言われていましたが、意外にあっさり到着。医局では秘書さんが出迎えてくれ、早速道案内をしながら、白衣と術衣の用意をしてくれました。ロッカーに荷物を入れた後、CCUの回診へ。CCUは循環器の急患および外科術後のケアにあてられたスペースで、手術が重なると外科の患者が多くいる状態もあるようですが、今回は循環器の患者が多くいるように思いました。特に重症心不全、虚血心、先天性心疾患、大動脈解離に至るまで幅広く入室されており、症例の多様さに驚いたのですが、今回の研修中、グループとしてお世話になった圷先生によると「先週はもっとバラエティに富んでいたのだけど...」とのこと。圷先生への最初の自己紹介で「緊急症例の見学」と言ったのですが、その後のつっこんだ話になると「研究はエコーしていました」となり、結局ほかの人に紹介してもらうときには「エコーの先生だ」と紹介されました。その流れで、午後は研修医相手にエコーを実演することに。DCM like heartにエコーをあてていると2年目の循環器志望の先生が「俺の出す画像より凄く明瞭だ」と言われて、ちょっとニンマリ。でもまあ、2年目に言われるのは当たり前か...。初日の心不全患者の討論では急性期ならではの考え方があり、刺激を受け勉強にもなりました。その他、病院案内のほかにIABPの再挿入などもあり徐々に盛り上がったところで、最後に夕方にrecent MIのカテがありました。カテの物品出しとかしながら、最後には雰囲気もつかめたかなあという感じです。術者は僕より3~年ほど上の先生でしたが、MIに対してももう全て一人でやっている感じで、すごいな~と。結局LADがフルメタルジャケットとなり、安定したままCCUへ。その後は夜の引継ぎカンファレンスの後、解散となりました。
 初日の夜ということもあり、早めにホテルへ。でも到着したのは10時過ぎ。ホテルは近場で取れば良かったとかなり後悔。

◆2日目
 朝は7:50~のカンファレンスに参加しました。ACCの発表予行とか、地方会演題発表、抄読会を楽しみました。特にACCの発表では「心筋のサルコメアに沈着する脂肪組織は肥満に多くDCMの悪化要因である」とセンセーショナルな内容。もしかしてDCMでβ-blockerのアーチストが効く人、効かない人がいるけど、それと脂肪が関係あったりするのかなぁ、などと妄想してしまいました。心筋生検を沢山やっていて、全て電顕をかけているそうです。あと、2013年の日循は日本医科大主催だそうです。医局員みなさんで拍手していたので僕も拍手。そこでの自己紹介を済ませてから、CCUへ。CCUでは入院患者のカンファレンス、薬の説明会、医局会となりました。ここでももう一回自己紹介しましたが、何か新しいことを言おうと思い趣味:剣道と言い切ってしまいました。もう1年以上やっていません(苦笑)。昼食を終えてから、病棟で昨日のMIのエコーを撮らせてもらい、その後に救急救命センターの部長先生に御挨拶へ。センターの機能や特徴についての説明がありました。関連病院がコードブルーのロケ病院だったり、秋葉原の事件の時に出動した際にはCPAの患者を連れてきて蘇生させたりとの話も聞けました。この日は結構静かに時間が流れ、緊急カテも無く終了。午後9時ころまでほかの先生方と談笑した後、ホテルへ。
...雪でした...
 近くのセブンで傘を買うまでびしょびしょです。なんとかたどり着き就寝。

◆3日目
 朝は通勤ラッシュに揺られましたが無事病院に到着。午前は回診。チーム患者の方針決定などがありました。救命センターのCPA症例にエコーあてたりしつつ、主治医の話で驚いたのが同じ循環器内科でもCCUの担当医師と病棟の担当医師は別ということです。緊急の場面ではCCU担当医師が主治医なのですが、病棟では別に主治医があたるので分業化が進んでいるなぁと思いました。メリット、デメリットはあるとの事です。昼食後は「CV lineをとるのにエコーを使おう」という講義がエコーメーカーからあった後、外来からの呼吸不全患者(心不全疑い、だったけど違う様です)のエコーをあてたりしました。その後、PTAの見学に。Bi-planeでCTO病変に対するPTAは見応えがありました。どんな長期の戦いになるかと思って見ていましたが、2時間ぐらいでCTOの他、1病変追加して治療していました。ここでも僕より5年先輩の先生が指導的立場でやっていましたが、どうやら高知出身の先生との事。メアド交換しちゃいました。
 カテカンファでは、左室流出路狭窄に対して左冠動脈中隔枝に薬を注入して人工的に梗塞をつくって(!)、流出路狭窄を解除するという技術についても教えてもらいました。

◆4日目
 今日は当直の日ということもあり、ゆっくり出発。ホテルで荷物を預けたりしていると、時間が遅れてしまいそうになったので、途中駆け足で病院へ。午前中はカンファレンス+回診。このとき、5年~くらいの上の細川先生に、月刊心エコーで名前見かけたことあると言ってくれたのは、何気に嬉しかったです。急患のエコーもさくっと撮りましたが、心不全ではない様子。急性の呼吸不全原因がはっきりしませんが、とりあえず無気肺か? ということで治療開始。指示出しをした後に昼食。救急入院が無ければ大体こういうスケジュールのようです。他に心エコーはASDの高齢患者が居て、研修医に撮り方を教えることに。うんちくもしゃべりながら30分くらいかけて撮りました。女医の先生でしたが、熱心な感じでしたので、そのうちエコーの学会でも見かけるようになるのかなぁ、とか想像しつつ、その後に1週間挿管していた患者の抜管が予定されていましたが、気管が浮腫っているようなので(管のエアーを抜いてもリークが出ない)置くことに。あと、夕方前に思い立ち、先ほどの月刊心エコーの話題を言ってくれた細川先生に頼んでエコー室に見学に行きました。エコーは全部で8~9台。心臓専用は3台位の様です。レポートの仕上げは全部指導するドクターが手書きということで、すごい手間暇かけて作っているなぁと思いました。
 この日は当直を体験しようということになっていたので、夕食はみんなで鍋を注文し、その後に病棟業務へ。

◆最終日
 結局、夜はEF<20%の心不全患者の緊急入院があり、3時~5時くらいまで働いていました。エコーを任せてくれたので、好きなようにレポートを書いてみました。E/e’とかも書いてみたのですが、救急時にいるかどうかは微妙ですよね...CS-1の基準に入るので、血管拡張薬での治療のみ開始され、経過良い様です。(この救急ではCS1~3まで血圧で分けて、150以上ならCS-1として血管内ボリュームは適当であり、血管拡張薬と必要に応じてBiPAPで再分布を促す、CS-2は100~150の血圧の時ですが、やや水が増えてきた状態で状態によっては利尿薬を使う、CS-3は血圧100以下で高度鬱血が無ければボリュームを入れて血圧を上げないといけないという風な考え方です。CSという概念が初だったので新鮮でした。)
 朝9時からカンファレンス開始し、佐藤直樹先生の回診も見させて頂きました。ここは連日朝にスーパーバイザーとして各先生が登場して提示を繰り返しするので、患者さんのことを色々な視点から考える訓練としてとてもよいなあと思いました。普通はなかなかここまでフォローできる人的余裕が無いのが現実かなぁと。この辺りも学生に人気がある原因かもしれません(学生は50人くらい毎年大学に残り、循環器内科は7~8人コンスタントに入局するそうです)。昼食をはさんで入院患者の緊急CTを撮像したり、CPA患者のエコー撮ったり(結局PCPSがほんの数分で挿入されました)、救急救命センターのほうは戦場の様相を呈しています。
 その後、研修医にエコーを教えたり、エコーの話も年上の先生から聞かれたりと、最終日になるとエコー話題が多くなりました。来年も入局員は多いようですが、そのうち1人はエコーに興味があって神経内科志望から循環器内科志望に数日前変わったとの事(昨日ASDのエコーを一緒に撮った子です)。女の子ですし、当科でも似たような状況の子がいるなぁ、とか思いました。最後に挨拶をして、晴れて研修終了となりました。

◆終わりに
 5日間にわたり日本医科大の先生方は非常に親切で、病態に対する考え方も勉強になり、和気あいあいとやらせていただきましたのでストレスフリーに研修できたと思います。卒後すぐに大学院に入った私としては、このような外病院での刺激は気持ちも新たに医療に取り組もうと思うきっかけとなったと感じています。今後も日本医科大との交流がますます深まりますように、祈りつつ。あと、来年2011年2月24~26日は日本集中治療医学会学術集会が日本医科大主催で横浜開催とのことです。今回のような交流もありましたので、抄録も出来れば出して関係を続けていけたらと思いました。