高知大学医学部附属病院老年病科・循環器科での専門研修参加(指導医の立場から)
徳島大学病院循環器内科 助教 岩瀬 俊
2013年2月高知大学医学部附属病院で行われた専門医研修に指導医として参加しました。私自身、高知医科大学(現 高知大学医学部)で6年医学を学び、卒業後に徳島に戻り循環器内科診療に携わってまいりました。学会や講習会参加のため高知に行く機会はありましたが、母校の診療現場に医師として参加する機会は卒業後ありませんでした。現在、徳島大学病院循環器内科において学生教育や研修医指導に携わる立場として、高知大学医学部附属病院での研修の実際を体験したく、門田宗之先生(卒後3年目)の専門研修に同伴する形で二日間の日程で高知大学医学部附属病院老年病科・循環器科に伺いました。
高知大学医学部附属病院老年病科・循環器科は土居義典教授が肥大型心筋症をはじめとした各種心筋疾患に関して有数の診療実績と研究業績を有する施設です。初日の午前中は心エコー図検査に参加しました。多忙な病棟および外来業務をこなしながら、専門研修に相当する若手医師が心エコー図検査およびレポート作成を行っている様子を見学しました。検査終了時には若手医師と指導医が、記録された動画を確認しながら病態や検査目的に即した記録が出来ているかディスカッションしている姿が印象的でした。ただマンパワーの問題で検査件数に縛りが生じているとの発言もありました。
午後からは今回の研修窓口をしていただいた久保 亨先生の心筋症外来ならびに肥大型心筋症の遺伝子解析を行っているラボを見せていただきました。久保先生は肥大型心筋症の遺伝子解析ラボを構築するため海外留学し、その後、高知大学に戻り今のシステムを構築されたとお聞きしました。遺伝子解析には膨大な手間と時間が必要ですが、テクニシャン1名と連携して丁寧な解析をされていました。心筋症外来では久保先生が実際、外来で経過観察されているFabry病症例の病歴や心電図経過などの提示をしていただきました。さらに高知県の循環器研修施設間で行われている症例検討会に参加させていただき、濃密な一日を過ごすことが出来ました。各施設が提示される症例は全例興味深いものでした。
二日目は朝8時から病棟で行われる回診前プレミーティングに参加しました。担当医は現病歴や既往歴を文章として提示しつつ症例提示を行い、治療方針を含めたディスカッションを限られた時間の中で行っていました。現病歴を含め、今までの経過を簡潔に文章化することは、内科医として当然のことです。ただ多くの入退院症例をこなさないといけない最近の医療情勢では、ついついおろそかになる点です。基本に忠実な症例提示に深く感銘を覚えるとともに、当科でも今までのスタイルを継承し、基本は決しておろそかにしてはいけないと感じました。また80歳〜90歳台の心不全症例が多いことも印象的でした。社会の高齢化に伴い、心不全症例が今後、急増することは予想されていることですが、徳島県以外の地域でも同様の現象が起きていることに驚くとともに、慢性心不全症例に対する包括的な診療基盤構築が急務の課題であることを改めて痛感しました。午後から実習を担当していることもあり、プレミーティングの途中で私は徳島への帰路につかせていただきました。
2013年3月をもち老年病科・循環器科教授 土居義典先生が定年退官されるそうです。私自身、学生時代講義や病棟実習で指導を受けた土居先生のプレミーティングでのお姿を拝見して、今やおぼろげとなった学生時代の思い出や時の流れを感じました。
最後になりましたが、年度末の多忙な時期に研修指導をお引き受けいただきました久保 亨先生、土居義典教授をはじめとした高知大学医学部附属病院老年病科・循環器科の諸先生ならびに参加を許可いただいた徳島大学病院循環器内科佐田政隆教授をはじめとする大学スタッフに厚く御礼申し上げます。